野田村 ON&OFF Village

そうぞうりょくがつながる、岩手・野田村ワーケーション。

野田村 ON&OFF Village

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ON & OFF MAGAZINE

ON & OFF INTERVIEW #01

インタビュー #01
文化をつなぐ大切さ

ON & OFF INTERVIEW #01

インタビュー #01
文化をつなぐ大切さ

UPDATE:2022.03.07

写真:熊谷 義朋

朝、港で揚がったばかりの新鮮な魚たちや野田村の名産「荒海ホタテ」を贅沢に使ったグラタン。野田村のにがりでできた濃厚な豆腐と、じっくりていねいに煮込んだもつ煮。食材そのもののおいしさを引き立てる様々な惣菜たち。海の幸・山の幸に合わせるのは「なもみビール」か、それとも「山ぶどうワイン」か。野田村の自然の恵みをまるごと味わうフルコースを前に、村人も、旅人も、思わず笑みを浮かべ、会話を弾ませる。

野田村の魅力をみんなで語り尽くす、おもてなしの夜。

「野田村 ON&OFF Village」利用者との交流会で、野田村の食の文化を伝えるべくごちそうをふるまってくれたのは、2021年の春より野田村の中心地にある「*ねま〜る」内で足湯&カフェ「たいようのいちこ」を営む松川美穂子さん。

生まれも育ちも野田村だという松川さん。交流会の際に伺った「たいようのいちこ」をはじめた理由や、今の野田村が抱えている課題、そして野田村の魅力を、ON & OFF  INTERVIEW としてお届けします。

*ねま〜る ⋯ 「野田村 ON&OFF Village」 の大事なワーケーション拠点の1つで、カフェやショップを併設するコミュニケーション・スペース。震災後における交流の再興の場として2015年12月の設立以降、村の人たちによる様々なイベントやワークショップが行われてきた。

足湯&カフェ「たいようのいちこ」の松川美穂子さん

もしかして
私しかいない?

—— まず、おいしい料理ありがとうございました。

いえいえ。私は料理人ではないので、あくまで野田村の家庭料理です(笑)。よろこんでもらえたならうれしいです。

—— どの食材も素材の味が濃くてびっくりしました。名物の荒海ホタテはもちろんですが、豆腐は驚きでした。

そう! そうなんですよ。野田村の食材はお出汁やお塩でちょっと味付けするだけでおいしくなるので、調味料もそんなにいらないんです。豆腐も米田さんというお豆腐屋さんが野田塩の「にがり」で昔ながらの手法で一生懸命に作った豆腐です。「たいようのいちこ」でも地産地消を大事にしていて、農家さんや漁師さん、生産者さんの想いが伝わると、さらにおいしく感じらるし、野田村のことを好きになれると思って、食の豊かさを伝える場としてカフェをやっています。

—— 松川さんは生まれも育ちも野田村ですか?

そうですね。仕事で少し離れていた時期もありましたけど、震災がきっかけで野田村に戻って役場で介護予防の担当で看護師を。その仕事を通じて、村にいる65歳以上の方たち「ほぼ全員」と言っていいほどお会いして関わらせていただいたんですよね。その時に気づいたんですけど、野田村で長年生きてきた人たちの「知恵」が本当に素晴らしいなって。みなさんの生き方が美しいんですよ。この土地や文化を知り尽くした暮らし方。本当にたくさんの話を聞かせてもらって、時々機会があればその作業を見せてもらったりしながら、決して便利ではないし、簡単なことではないけれど、野田村に生まれた私たちにとって必要だったり、大切だったりすることがたくさんあるなと思い。

—— すごい。その「知恵」はどこかで発信されたりしていたんですか?

いや、野田村の人たちって職人気質なのでそういうの苦手なんです。それに、じいちゃんばあちゃんの世代からしたら昔からやってる当たり前のことなので、あえて残そうとか発信しようという風には思わないんですよね。でも、その「美しさ」を知った私が、これを知ったままここで止めてしまっていいのか? って。誰かが伝承しないと、いつかなくなってしまうかもしれないって。村の65歳以上のほぼ全員と会って話を聞いてる人なんてそういないですよね。なので「もしかして私しかいないんじゃない?」と思って2021年の春にはじめたのが「たいようのいちこ」です(笑)。

—— 確かに! 松川さんしかいない!

ただ、カフェもやるしイベントもワークショップもやるし、訪問整体もやるし、介護の仕事も引き続き手伝っているのでもうとにかく大変です。昔からそうなんですが、求められるとやりたくなってしまうんですよね(笑)。ただ、私だけでできるとは思っていないので、とにかく世代を超えて村のいろいろな人たちが集まって交流できて、いろんなことに挑戦できる場所と環境を作ろうと思ったんですよね。あくまでここに暮らす「住人」の視点で野田村のことをもっと知って、伝えたいという気持ちがあったので、公務員としての看護師の仕事はやめて、お店に来る人たちや、これまでつながってきた人たちと一緒に野田村の文化の「伝承」や魅力の発信を進めています。

子どもが村長に
直接意見できるカフェ

—— 普段どういう方々が利用されますか?

村の中心にあるので地域の方々が通りすがりに声をかけてくださったり、日替わりランチを楽しみに食べに来てくださったり、子どもたちのたまり場になったりしています。最近では SNS で情報を見てきてくださる人も。この間、村長さんがランチを食べに来てくださったんですが、たまたま隣の席にいた男の子が、村長に「野田村で野球がしたい」って話してるんです。子どもが村長に直接意見できるカフェってすごくないですか?(笑)。

—— 確かに!そのエピソードはすごいですね。ちなみに一年前というとコロナ禍で事業を立ち上げるのは大変な判断だったんじゃないですか?

私が大変というより、孤独を感じる大変な時期だからこそ「場所」が必要なんだと思っていました。もちろん高齢者の方もいらっしゃるので感染症の対策は徹底していますが、誰でも会いたい時に会いに来れる場所がある。それが「地域」にある理由だと思っています。それに、オンラインでできることもあると思っていて、今度、毎週木曜日にやっている「夜カフェ」を、全国各地とつないで野田村のことを話し合うオンラインサロンみたいな形にできたらと考えています。

—— それも楽しみですね。松川さんの話を聞かせてもらっているといろいろスムーズにうまく言ってるように思うのですが、「課題」を感じることはありますか?

どの地域もそうだと思いますが、高齢化と後継者不足はやはり課題ですね。野田村の文化を残したいと思ったのも同じ課題だと思います。例えば野田村の郷土菓子に「*しだみだんご」というのがあって、とてもおいしいのですが、それを昔から作っている人がもうご高齢で、いま私たちが残さないとという想いがあります。

*しだみだんご ⋯ やませの多いこの地域では小豆がうまく育たず、小豆の代わりにどんぐり(しだみ)を用いて餡を作る。アクが強く下処理に2日ほど要するが、その上品な味わいにはファンが多い。産直「ぱあぷる」で購入することができるが、午前中には売り切れてしまう人気。

お菓子として販売されていたというより、おばあちゃんより上の世代の人たちが時々作ってふるまわっていたらしいんですが、手間はかかるし1日に作れる数も限られているので、役場にも協力してもらってなんとか村で力をあげて伝承しようとしています。私も1年かけてようやく作れるようになったんですが、やはり昔の人たちが作るあの味にたどり着くにはまだまだ⋯。いつかみんなで「しだみだんご」を、ホタテ、山ぶどう、塩に続く野田村の名物にしたいなと思っているので、ワーケーションに訪れる方々にぜひアイデアをいただきたいです。

—— さきほどおっしゃってた「夜カフェ」も1つのきっかけになりそうですね。

野田村に興味を持ってくださる方なら誰でも自由に参加できて意見を交換できる場になったらうれしいですね。野田村が遠くても、オンラインでつながることはできますし、そこで会話が弾めば野田村に訪れるきっかけにもなるのかなと思っています。

野田村は 夢を叶えられる場所

—— 松川さんのそのモチベーションはどこから来るんですか?

まず野田村のことをもっと知りたい、発信したいっていう想いがあるんですが、その先には野田村の未来を担う子どもたちに「野田村っていいところなんだよ」って言ってあげたいという想いがあります。そのためには野田村のことを知っていたいじゃないですか。野田村の大人の美しい生き方を背中で見せてあげたいなって思うんですよね。

「たいようのいちこ」のオープンのタイミングが、ちょうど震災から10年の節目で、当時小学校だった子たちの中には成人を迎える子もいます。都会に出ることだけが正解ではなく、「いろんな生き方があるよ」って提案してあげたいんです。

野田村はありがたいことにいろいろと復興支援を受けさせてもらって、なんとかここまでがんばってこれました。でも、私たちがそれに慣れてしまってはダメだと思うんです。「誰かがやってくれてあたりまえ」ではないんだということをそろそろ考えなくてはいけないんですよね。人に頼るだけではなく、今まで「無料」だったものにも価値があって、それを村の中でちゃんと循環させないといけない。最初は物々交換でもいいから、自分たちで産業を生み出す力をつけないと、子どもたちは離れて高齢化が進む一方です。震災前と震災後と、現在(いま)で、どんどん私たちが価値観を変えていかないといけないんですよね。

—— そのために取り組んでいることはありますか?

時々、村の有志で集まって、今日みたいにみんなでおいしいものを食べながら意見交換会をしています。野田村の未来をどうしていきたいか、野田村の新たな名物を生み出せないかなど。まわりから見たら「そんなことできるわけない」って思うこともありますが、できるかできないかではなくまず、夢として描いてみる。そうすればアイデアはたくさん湧いて出てくるんですよね。実際に形にしたものもあれば、これからというのもあります。とにかく野田村を「夢を叶えられる場所」にしたい。それがモチベーションなんだと思います。

—— なんだか松川さんの話を聞いてると何か自分でもできることがあるのではないかとワクワクしてきます。

ありがとうございます。野田村 ON&OFF Village に訪れる人たちと一緒に叶えられる夢もきっと今後は出てくると思うので、いろいろと楽しみです。

—— 最後に松川さんが好きな、野田村の風景を教えてください。

野田村は山に向かう道がたくさんあるんですよね。車1台通れるくらいの細い山道なんですが、地域の人たちがちゃんときれいに手入れしてくれているおかげで、とてもきれいなんです。木が繁ってトンネルになっていたり。晴れた日は木漏れ日が差し込んで、雨の日は自然のみずみずしさが感じられる。小さな川が流れているところもあって、そこでのんびり石の上に座って川の音を聞くのもいいです。

それと、海には「私のプライベートビーチ」と言ってる場所があります。夜になると海に月がキラキラと反射してすごくきれいで、だーれもいなくて、ざばーんざばーんと波の音だけが聞こえるんです。だから時々、大声で悩みを叫んだりしています(笑)。

野田村にワーケーションに来た際には、その場所を教えるので、きれいな月を見ながらストレス発散してみてください!

—— 松川さん、素敵なお話をありがとうございました。

野田村の人たちは「たいようのようだ」と話す松川さん。そして「いちこ」は居場所の意味。「たいようがいる場所」として、絶えず輝き続けるカフェは、野田村に暮らす人、そして野田村に訪れた人たちの夢を叶える場所です。

ここでは伝えきれないたくさんの可能性、そして同時に課題が、野田村にはあります。つまり、ほかにはない「のびしろ」がこの村にはあるんです。

そんな可能性や課題を、「そうぞうりょく」でつないでいくのが「野田村 ON&OFF Village」の魅力の1つ。

ぜひ、野田村へお越しの際は、ワーケーションを通じた様々な ON と OFF を感じてみてください。


【 例えばこんな ON & OFF 】

① 松川さんたちが伝承するモノ・コトを野田村の名物にすべく、体験を通じて交流や見識を深める。
→ 例えば新商品のパッケージデザイン、それに付随するキャッチコピー、マーケティングなどのブランディングへとつなげる。SNS 等の発信も。


※ 体験メニューは、今後このサイトでもご紹介していきます。事前にお問合わせ、ご確認ください。


② オンラインでも開催される「夜カフェ」や「意見交換会」などに参加して、自分のできること、やりたいことと村のニーズが重なるポイントを探してみる。
→ 例えば夢を叶えるためのアイデアをキャッチして形にする(都市部にいながら交通費などのコストも負担せずに関われる取り組みの1つ。実現化に近づいたタイミングで野田村に赴きワーケーション)。

③ 自分たちのスキルを活かしたワークショップ・イベントの提案
→「ねま〜る」という場所を活かして、ワーケーション滞在中に野田村の未来をつくるためのワークショップやトークイベントを開催する。

④ 野田村滞在中に何か困ったことがあったらとにかく松川さんに相談!
→「たいようのいちこ」の営業時間を調べて、松川さんにいろいろな相談を。きっとそこから広がる可能性がたくさんあるはず。

たいようのいちこ
https://www.noda-tsunagari.com/cafe

Instagram
https://www.instagram.com/nodamura_daiojou/

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